「お約束の積み重ね」と物語の発展

前回、ホラーでないゾンビものの魅力として「ゾンビとは、往生際の悪いものを置き換える仕組みである」というような主旨の記事を書きました。

このこととも関連しますが今回は、創作物において「お約束」「前提」が重なることで、物語が深化発展していくケースについて一考してみます。

 

 ゾンビもの紹介のなかで、でんぱ組の「永久ゾンビーナ」を例に出しました。従来。ゾンビ化した要因として恋愛などが登場することが多かったわけですが、この曲ではそれにとどまらず死因までも恋愛に絡められています。

ここでは、①ゾンビという創作②心残りがゾンビを生むという物語の歴史の中で育まれてきたお約束のうえに「フラれても蘇る」という死因が成立しているのだと思います。

 

話題作がネットなどで拡散し、読まれずとも設定の特異さを語ることができるこのご時世にあって、上のような「お約束の積み重ね」は見逃せない面白ポイントだと思います。

 

たとえばノベルゲーの普及によって、フラグシステムと「はじめからやり直す」ゲーム性が「お約束」になりました。このゲーム性を物語に持ち込んだ結果、タイムリープ(はじめからやり直す、を繰り返してフラグを回収する)は一から説明されるまでもなく、登場する機会が増えましたのだと思います。

 

同様のケースで思い当たるのが「ヒーローもの」作品です。仮面ライダーだったり009だったりウルトラマンだったり、アメコミだったり。いろんなヒーローがいるわけですが、そうした作品群によってヒーローという存在がお約束になりました。ヒーロー=悪から弱き者を守る人という構造です。つぎに、ヒーローの職業化という段階に お約束は進みました。最近なんかは『ぼくのヒーローアカデミア』なんかは目立ちますね。ほかにも、『タイガー&バニー』なんかもそうでしょう。『ワンパンマン』『ヒーローカンパニー』などなど枚挙にいとまがありません。「お約束」の積み重ねのいい具体例だと思います。

 

このように、数多く作られてきた創作テーマあるいは大きな影響を生み出した創作テーマは、追随する作品群によって確率されお約束へと昇華されます。そして、その「お約束」を土台にさらなるテーマが生み出されていくのです。物語みるときつくるときには、こうした「お約束」を見抜き、そのテーマを前提にした構造に着目してみるのが面白いと思います。