異能力の果て―ジョジョに見るバトル漫画の発達史②

更新が遅くなりました。前回のポストにつづき、ジョジョの各部を紹介しながら、バトル漫画の発達の流れを考察します。

 

前回は1、2部をバトル漫画のファーストステップとして位置づけました。ファーストステップにおいて、「能力」はどちらの攻撃力が強いのかの理由付けとして登場します。

 

では、ジョジョ3部以降はどのように変化していくのでしょうか。(ネタバレあり)

 

 

ジョジョ第三部

第二部主人公ジョセフの孫である空条承太郎ジョースター家因縁の吸血鬼ディオを打ち倒すべく仲間たちとエジプトを目指す第三部。

 

第三部では「波紋」にかわる新たな概念として「スタンド」が登場します。スタンドは、(ほぼ)その人固有の能力である点が波紋と異なっています(登場当初)。はじめて第三部を読んだとき僕は「なんじゃこりゃ、波紋バトル読みたいよー」と思いました。良くも悪くもそのくらいインパクトのある新機軸だったと思います。

 

上で、スタンドはその人固有の能力であるとの話をしましたので、ここで主要な登場人物の能力を紹介します。

 

空条承太郎スタープラチナ

精密で早く攻撃力も高いパワー型の人型スタンド

●モハメドアブドゥル・マジシャンズレッド

炎や熱を自在に操るスタンド。

花京院典明ハイエロファントグリーン

遠距離攻撃ができる人型スタンド。紐状になり、人体に潜るなど。

ジャン・ピエール・ポルナレフシルバーチャリオッツ

甲冑をまとった騎士のようなスタンド。スタープラチナのような攻撃力はないが、素早い攻撃を繰り出す近距離スピードタイプ。甲冑を脱ぐと捨て身で、さらにスピードが増す。

●ジョセフジョースター・ハーミットパープル茨状のスタンド。カメラを壊して念写するなど、情報の収集に長けている(と思われる)。波紋を流したり、ロープアクションをしたり、自由に出せる茨としての活躍など。

 

サポート役的な前作主人公ジョセフはのぞくとして、バトル要員である主要登場人物の能力は、この時点では実は第一部第二部で登場する能力とそう変わりないです。変化があるとすれば、能力の中身というよりはむしろ、能力が一人ずつに付与されているというところでしょう。

 

ただし、中盤以降においては、能力の位置づけが大きく変貌していきます。まさに、ここでの変化がバトル漫画における、能力から異能力へ変化していく過渡期となります。ラストバトルにおいては、承太郎のスタンドであるスタープラチナが覚醒。ラスボスであるディオのスタンド・ザワールドと能力「時を止める」ことができるようになります。

 

ここで、バトル漫画はセカンドステップに足を踏み入れることとなります。これまでの能力が、どちらの攻撃力が高いかの比較合戦だったのにたいして、時を止めるという力は、物理的な攻撃力ではありません。時止めという能力を利用して、どのように戦うかという点にバトルの争点が移り、勝者にはその漫画独自のルールに基づいた「根拠」が必要になったのです。

 

そして、承太郎の能力変化に代表される能力から異能力への推移は、バトル漫画における勝敗のルール化が整備されるスタートとなっていくことになります。